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命を切り出す覚悟。「1枚革」と経年変化が証明する真のヴィンテージ

コンクリートに広げられた、一頭分の大きくなめらかな1枚革

この記事の結論(90秒要約)

誰もが憧れるラグジュアリーブランドの製品は、「買ったその瞬間が最も美しい」完成されたアートです。私もその技術と歴史に深い敬意を抱き、いつかそんなブランドになれたらと思うこともあります。

しかし、今のVIEOTYヴィンテージコレクションが目指す方向性は少し異なります。私が提供するのは、買った瞬間はあえて「未完成」であり、お客様の日常と時間が刻まれることで初めて完成する贅沢です。

なぜ、テレビ、雑誌やデパートには長く育てる「ヴィンテージ」が並ばないのか。そして、数年で剥がれてしまう「劣化」と、何十年も深みを増す「経年変化」は何が違うのか。
この記事では、一生モノのレザーと真鍮が持つ物理的な事実と、命である「1枚革」から極力縫い目を排して切り出す、私のこだわりについてお話しします。

この記事の全体像

なぜデパートには「一生モノ」が並びにくいのか。

雑誌を開けば毎月「今年の新作」が特集され、デパートには季節ごとに新しいコレクションが並びます。50代の成熟した女性であれば、「流行のサイクルが早すぎる、ついていけない」と感じたことがあるかもしれません。

メディアや小売店に、長く育てていくヴィンテージ製品が並びにくいのは、明確な理由があります。それは、アパレル産業が「常に新しいものを買ってもらうことで経済を回すビジネスモデル」だからです。
一つの上質なものを10年、20年と大切に使われてしまうと、新作が売れなくなり、広告主も企業も困ってしまいます。これは決して悪意ではなく、現代の経済構造上、当然の仕組みです。

だからこそ世の中には、数年で買い替えることを前提とした、軽くて扱いやすい素材(一般的、機能的な合成皮革など)が溢れています。

「劣化」と「経年変化」。
10年後、手元に残るものの違い。

「一生使える保証」は、どんな高級品にも存在しません。どんな素材でも、使えば必ず傷がつき、変化します。しかし、その変化が「みすぼらしい劣化」になるか、「凄みのある経年変化」になるかは、選ぶ素材によって決定的に異なります。

合成皮革(合皮)と本革の違い

軽く、雨にも強い合成皮革(PUレザー等)は非常に便利です。しかし、空気中の水分と反応して化学分解(加水分解)を起こすため、数年経つと表面がポロポロと剥がれ落ちてしまいます。これが「劣化」です。

一方、私が使用する本革(牛革・豚革)は、剥がれるという概念がありません。日焼けし、擦れ、傷もつきますが、適切な油分を与え続ける(指でなでる・こする)ことで、その傷すらも色が深まる要素となり、アンティーク家具のような艶をまといます。これが「経年変化」です。

メッキと真鍮(無垢)の違い

美しいゴールドの金具。安価なものの多くは、別の金属の上に薄く色を塗った「メッキ」です。摩擦・衝撃でコーティングが剥がれると、下地の赤やグレーの金属が見えてしまいます。

私が採用する「真鍮無垢(しんちゅうむく)」は、芯まで全て同じ真鍮でできています。使ううちに酸化して黒ずみやくすみが出ますが、それは剥がれたわけではありません。※磨けばいつでも、黄金色に輝きを取り戻します。

時間を味方につける素材の証明。

VIEOTYのビスポークでは、お客様が数年かけて完成させるための「未完成のキャンバス」として、特定のレザーと真鍮をご提案しています。実際の変化をご覧ください。

リネア ヴァスカ リスシオの経年変化。新品時のマットな黒と、使い込んだ後の深い艶の比較
【LINEA VASCA Liscio】
上:新品時の沈黙を保つマットな質感。
下:使い込むことで油分が上がり、鈍く光る深い艶が現れた状態。
アラスカレザー アイボリーの経年変化。ホワイトワックスが溶け込み、艶やかなキャメル色へと育つ過程
【アラスカレザー / アイボリー】
上:粉雪のようなホワイトワックスを被った新品時。
下:体温と摩擦でワックスが溶け込み、下地の艶やかな色(飴色)が育った状態。
上下で比較する真鍮無垢の経年変化。上が削り出しの無加工の新品、下がガストーチによるヴィンテージ加工後、約2ヶ月間使用して重厚なアンティーク調に育った状態。
【無垢の真鍮】
VIEOTYでは最初から落ち着いた雰囲気を出すため、あえてやすりをかけ炎で炙り、酸化(くすみ)を定着させてお渡しします。育てる楽しさを味わえる本物の金属です。

命をいただく。「1枚革」の美学と端材への敬意。

無骨なコンクリートの上に広げられたVIEOTYブランドカラーである紫の1枚革(ピッグスエード)。極力縫い目を排したシームレスな造形のため、職人の手が革の端を力強く掴み、一頭分の命から贅沢にパーツを切り出そうとする静かな迫力を捉えた写真。
私が向き合うのは素材ではなく「命」。この広大なキャンバスから、あなただけの製品を切り出します。

私が大型のバッグ(例:通勤用)を仕立てる際、基本的には牛や豚一頭分にあたる大きな「1枚革(丸革)」からパーツをゼロで切り出します。

デザインの基本哲学は「極力縫い目(ステッチ)をなくすこと」。革の最も繊維が密で美しい中心部分だけを贅沢に使い、繋ぎ目のないシームレスな造形を目指します。縫い目を減らすことは、革本来のダイナミックな表情を堪能し、洗練させるための究極の「引き算」だからです。

小さなアイテムにおける、お客様への配慮と命の使い切り

しかし、すべてのオーダーにおいて「必ず新しい1枚革を下ろす」わけではありません。たとえば小物や部分的なパーツのオーダーで毎回1枚革を使用していては、お客様から頂戴する費用が不必要に膨れ上がってしまいます。

そのため、オーダーの規模によっては、お客様の費用負担を抑えるための最適な選択肢として「端材(はざい)」を活用したご提案をさせていただきます。
私にとって端材とは、決して捨てるべき切れ端ではありません。大型の製品を美しく切り出した後に残る「大切な命の恩恵(余白)」です。

大きなキャンバスからダイナミックに切り出す贅沢と、残された命の余白を無駄なく小さなアイテムへと吹き込む柔軟性。用途とご予算に合わせて、どちらも誠実に仕立てさせていただきます。

※もちろん、デザインのアクセントや、用途・強度的に必要な箇所においては、あえて裁断し美しく繋ぎ合わせる(縫製する)こともあります。デザインと機能に必然性があるときにのみ、私は自らの手で一針一針縫い上げます。

結論|あなただけの「100点」へと育てる贅沢。

買った瞬間をピークに劣化していくものではなく、あなたの日常と時間が刻まれることで、ゆっくりと完成へ向かうヴィンテージ。
1枚の革から切り出すこの贅沢なキャンバスに、あなただけの歴史を刻んでみませんか。経年変化という名の、本物だけが持つ美しさを仕立てさせていただきます。

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