この記事の結論(150秒要約)
【装飾の排除と、炎によるパーソナルな刻印】
現在仕立てている「iPhone 17専用極薄レザーケース」。当初検討していたシルバー箔押しというレザーの暖かみを壊す装飾を排除し、ガストーチの炎で真鍮を直接炙る「焼き印」を採用しました。温度調節が容易な半田ごてによる均質さを捨て、あえて温度の不確実なリスクを引き受けることで、経年変化と共にアラスカレザーのアイボリーと同化する、世界に一つだけの深いオーラ(色気)を生み出します。
【見えない領域への執着】
「使わない時はフラットになる」指掛けバンドを実現するため、背面にスリットを施し、裏側へ抜けた革の端をミリ以下の精度で「0ミリ」へと削ぎ落とす(段漉き)工程を公開。この見えない裏側への執着が品質を決定づけます。
ノイズを消し去り、傷跡を愛でる
私たちが日常で最も手に触れるもの。それがスマートフォンです。そのデバイスを包み込むケースもまた、VIEOTYの「美学」を体現するものでなければなりません。
現在、iPhone 17のフラットなボディに合わせ、アラスカレザー(アイボリー)を用いた極薄のレザーケースを仕立てています。その最初の決断が、ブランドを象徴する肉球ロゴの表現でした。
当初は化粧品パッケージと合わせた「シルバー箔押し」という選択肢もありました。しかし、それはレザーの質感とは相容れない「ノイズ」に他なりませんでした。
炎の偶然性が生む色気
私が選んだのは、電気式の半田ごてではなく、あえてガストーチの炎で直接真鍮を炙る「焼き印」です。
温度を一定に保つ電気制御であれば、失敗はありません。しかし、私はその画一的な均質さを嫌いました。炎の揺らぎ、真鍮に蓄えられる熱量、そして革に押し当てる力加減と離すタイミング。そのすべてが、焦げ目の「濃淡」というパーソナルな色気へと昇華されます。
もちろん、一瞬の油断や温度の読み違いで、革を深く焦がし過ぎてしまう、あるいは貫通させてしまう失敗のリスクと常に隣り合わせです。
しかし、そのコントロールしきれない偶然性すらも引き受ける覚悟が、物理的な熱の「傷跡」となり、時間と共にアラスカレザーのアイボリーと同化した時に、大量生産品には絶対に出せない圧倒的なオーラを放つのです。
「消えるバンド」を成立させる
本来対極となる機能性と美しさを両立させるため、このケースには指を通すためのバンドを設けています。しかし、使用していない時にバンドが浮き上がり、シルエットを崩すことは許されません。
「使わない時は消えるバンド」。それを実現するための心臓部が、1ミリの狂いも許されないスリットの貫通と、インナー構造の仕込みです。
アラスカレザーのメインパネルにスリットを入れ、そこに黒の鏡面コバ(裁断面を光るまで磨き上げる)に仕上げたバンドを差し込み、裏側へと貫通させます。
重要なのはここからです。裏側に折り曲げたバンドの端がそのままでは、極薄のケースの内部で厚みとなり、表側に醜い凹凸を生んでしまいます。

境界線を完全に消し去るための、裏側の「ゼロ漉き」。
刃先を寝かせ、折り曲げたバンドの端が「0ミリ」になってメインパネルに溶け込むように、斜めに薄く削ぎ落とす(段漉き)。
最終的には、この上から形状を保つための芯材(0.3mmのスライサー)と、内に秘めた色気を象徴する「紫の豚スエード」をベタ貼り(2枚の革を全面接着する技術)して封じ込めます。お客様の目には決して触れることのない、削ぎ落としの作業。
しかし、この見えない領域への執着こそが、最終的に手に持ったときの「何かが違う」という直感的な品格を生み出すのです。
オーラを纏う作品を、仕立てる。その静かなる闘いのはじまります。








