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雪解けのキャンバス。アラスカレザーで統一するVintageフルセットと「時間のグラデーション」

アトリエに納品された3枚のアラスカレザー(アイボリー)。厚みやサイズが緻密に計算された未完成のキャンバスが重なり、これから9点の特注コレクションへと生まれ変わる静かな期待感を表現した写真。

この記事の結論(90秒要約)

イタリア名門タンナーが手掛ける極上のレザー『ALASKA(アラスカ)』。私がVIEOTYビスポークの最初のキャンバスとして、汚れを敬遠されがちな「アイボリー」を選んだのには明確な理由があります。

それは、お客様の日常と時間が刻まれることで「雪解け」を起こし、最も劇的で美しい経年変化(深い飴色への成長)を見せる素材だからです。

この記事では、バッグから小物に至る「9点のコレクション」をすべて同じ革で統一するという、仕入れの裏側と、露骨なロゴの主張を排し、ブランドカラーの紫を「自分にだけ見える隙間」に潜ませる引き算の美学。そして、約5ヶ月間にわたる分割納品だからこそ味わえる「時間のグラデーション」という、特注(ビスポーク)ならではの醍醐味についてお話しします。

この記事の全体像

雪解けのキャンバス。イタリア名門が仕立てる「アラスカ」の真実

アラスカレザー(アイボリー)の表面の極端なクローズアップ。特有の微細なシボ(凹凸)に、粉雪のように真っ白なホワイトワックスがたっぷりと入り込んでいる様子。ここからワックスが溶け込み、エイジングが始まります。
表面を覆う粉雪のようなホワイトワックス。これが溶け込むことで劇的な変化が始まります。

今回採用したレザー『ALASKA(アラスカ)』は、イタリアの名門タンナー「La Perla Azzurra(ラ・ペルラ・アッズーラ)社」が手掛ける極上のフルベジタブルタンニンレザーです。

スペックが証明する「育つ」ための仕掛け

バケッタ製法と芯通し染め:
効率を完全に無視し、天然オイルを革の芯までじっくりと時間をかけて染み込ませるイタリアの伝統製法です。さらに、表面だけでなく革の内部まで染料を行き渡らせる「芯通し」を施しているため、後からクリームを足さずとも、使うだけで内側から油分が滲み出し、深い艶が生まれます。万が一傷がついても、下地が見えてみすぼらしくなる(劣化する)ことはありません。

雪の正体(ホワイトワックス):
表面の白い粉は、単なるデザインではなく革を守るためのたっぷりの蝋(ワックス)です。これがお客様の体温や摩擦によって革の内部へと溶け込み、下地から透き通るような飴色(アンバー)が姿を現します。これが私が「雪解け」と呼ぶエイジングの真骨頂です。

なぜ、私が愛用する「リネア」ではなく「アラスカ」を選んだのか

HERAIがサロンワークで約半年間愛用している「リネア・ヴァスカ・リスシオ」のシザーケース。スムースレザー特有の無数の傷が、深い艶へと変化している様子。
私が自身でゼロから仕立て、サロンワークで愛用しているリネアのシザーケース。無数の傷を飲み込み、凄みのある艶へと成長。

私のサロンワークを支えるシザーケースには、イタリアンレザーの「リネア・ヴァスカ・リスシオ」を使用しています。約半年間、あえてメンテナンスを行わずにラフに扱ってきましたが、無数の傷すらも凄みのある艶に変えていく、素晴らしい革です。

では、なぜ今回のフルコレクションのオーダーにおいて、私が惚れ込んでいるこのリネアではなく「アラスカ」を提案したのでしょうか。それは、事前のヒアリングでお客様からいただいた、ある「本音」が理由でした。

「爪の引っかき傷などを気にしながら使うのはちょっと…。どうしても神経質になりそうで……」

このお言葉を聞き、私は即座にアラスカレザーへの変更を決断しました。

リネアのような表面が滑らかな(スムースな)革は、どうしても使い始めの傷が目立ちやすいという特徴があります。それが「味」になりますが、「傷つけないように」と過度なストレスを感じてしまっては、せっかくのオーダーメイドが窮屈なものになってしまいます。

一方、今回採用したアラスカは、シュリンク加工による繊細な凹凸(シボ)があり、さらに表面がたっぷりのホワイトワックスで守られています。そのため、日常的な引っかき傷が目立ちにくく、ワックスが傷を包み込みながら艶へと変えていくため、神経質にならずに育てることができるのです。

作り手の好みを押し付けるのではなく、お客様のライフスタイルと心に最も寄り添う素材を見極める。それが、私が仕立てるビスポークの第一歩です。

執念の仕入れ。2頭分の巨大なキャンバスを「完全一致」させる

コンクリートの階段に滝のように広げられた163dsの巨大なアラスカレザー(アイボリー)。無機質な背景と有機的な命のスケール感の対比。

今回仕立てるのは、大型の通勤バッグから極小のスマホケースに至るまでの「9点のコレクション」です。私はこのすべてを、全く同じアラスカのアイボリーと、無垢の真鍮金具で統一します。

コレクション全体に完全な統一感を持たせるため、私はタンナー(問屋)に対し、厳格な要求を突きつけました。

【実際のオーダー指示の裏側(納品された3枚の革)】

今回のコレクションのために、アトリエには「ほぼ同じ大判サイズで、厚みだけが異なる3枚の革」が納品されています。これは用途に応じた0.1mm単位の厚み調整と、「命を余すことなく使い切る」という選択の結果です。

  • ① カバン用の元厚(163ds):
    カバン本体を支える163dsの個体は、重厚な2.2mmの厚みのまま納品。
  • ② 小物用の0.1mm調整(150ds 銀面):
    繊細な造形が求められる小物用の150dsの個体は、タンナーの段階で厚みを「1.3mm」へ均一に漉き加工(薄くする加工)。
  • ③ 命の副産物(150ds 床革):
    私がタンナーに強く要求したのは、「②を薄く削り落とした際に発生する下層の革(床革)も、捨てずに納品すること」です。これもまた大切な命の一部。見えない部分の芯材や、テスト用として大切に使用します。

※「ds(デシ)」とは、本革の面積を表す単位(1ds=10cm×10cm)です。163dsは「約1.6平方メートル」。牛の首から肩にかけての「ショルダー」と呼ばれる部位を丸ごと切り出した、非常にダイナミックな命のサイズです。

自然の命である革の表情を、別々のキャンバスで一致させることは容易ではありません。しかし、この厳選と、部位に合わせた厚みの調整がなければ、本当の意味での「統一された美」は生まれないのです。

命の地図。1枚の革に宿る「表情の違い」と適材適所の裁断

アラスカレザーの部位による質感の違い。上部は荒々しく深いシボ感、下部は滑らかで微細なシボ感を持つ
荒々しい表情も、滑らかな表情も、すべて「同じ1枚の革」の中に存在しています。

大きな1枚革(丸革)を広げたとき、そこには動物が生きてきた証である「命の地図」が広がっています。
よく動かしていた首や肩(ショルダー)の周辺には深く刻まれたトラ(シワ)があり、背中からお尻にかけては繊維が密で滑らかな表情を持ちます。

量産品が手放した「個体差」という魅力

規格の統一が求められる既製品では、品質を一定に保つために、こうした「部位による質感の違い(個体差)」は避けられる傾向にあります。

しかし、VIEOTYのビスポークは違います。私はこの大自然が描いたテクスチャの違いを、デザインの最も強力な武器として活用します。

強度が必要なカバン本体の底面には繊維が締まった滑らかな部位を配置し、視覚的なアクセントを持たせたいポーチの前面には、あえて生命力に溢れる深いシボ感の部位を切り出して配置する。

お客様の用途とアイテムの役割に合わせて、広大なキャンバスの中から「最もふさわしい表情」を見極め、適材適所で裁断していく。これこそが、一枚革からコレクションを仕立てる職人の最大の醍醐味であり、お客様にお届けする「世界に一つだけの造形」の理由です。

ロゴの主張は不要。自分だけが知る「ロゴと紫の隙間」

アイボリーのレザーの隙間から、内装の紫のピッグスエードがわずかに覗く様子
外側からは見えない。持ち主がアイテムを開いた瞬間にだけ現れるVIEOTYパープル。

世の中には、ブランドのロゴが大きく入り、色とりどりのカラーバリエーションで溢れるレザー小物がたくさんあります。それらを組み合わせるのもファッションの素晴らしい楽しみ方の一つです。

しかし、VIEOTYがご提案したいのは「徹底的な引き算」です。
日々の気分やトレンド、鮮やかな色は「毎日着替えるお洋服」で楽しめばいい。その代わり、あなたの傍で常に時間を共にするレザーアイテム群は、視覚的なノイズをなくし、あなた自身の「ブレない軸」として静かに統一されているべきだと考えます。

そのため、今回の9点のアイテムに、これ見よがしなロゴは一切入れません。(入れるとしても、目立たないよう極めてさりげなく配置します)。
そして、ブランドカラーである「紫のピッグスエード(豚革)」は、ポーチの内装やスマホケースの隙間など、「持ち主であるあなたにしか見えない場所」にのみ忍ばせます。誰かに見せびらかすためではない、究極の「Quiet Luxury(静かなる贅沢)」です。

5ヶ月の時差が描く、あなただけの「エイジング・グラデーション」

今回のコレクションは、同じ日にすべてが納品されるわけではありません。
制作順序に従い、約5ヶ月間かけて段階的にお手元へとお届けします。実はこの「分割納品」と「アイテムごとの使用頻度の違い」こそが、特注コレクション最大のエンターテインメントを生み出します。

最初に納品され、毎日指先で触れる「スマホケース」や「ミニポーチ」は、いち早く摩擦熱を帯び、雪を溶かして艶やかな飴色(アンバー)へと猛スピードで育ちます。
一方、遅れて数ヶ月後に合流する「iPadケース」や、カバンの中に守られている「コスメポーチ」は、買った当初の真っ白な雪景色を長く保ちます。

数ヶ月後、すべてのアイテムをテーブルに並べたとき、そこには「アイボリーから深い飴色」までの美しいグラデーションが生まれています。

それは単なる色のムラではありません。同じ命から切り出されたアイテムたちが、「あなたが何を一番よく使い、どんな時間を過ごしてきたか」というライフスタイルを可視化した証明(アート)なのです。

コレクション9点の全貌

あらゆる日常のシーンに適応するため、極限まで無駄を削ぎ落とした9つのコレクション。1〜3から順次制作と納品をスタートいたします。

【第一期 制作アイテム】

1.共通ショルダーストラップ
長さ120cm(調整可能)の着脱式。以下の「ミニポーチ」または「キーケース」等に付け替え可能。
2.ミニポーチ(2WAY仕様)
iPhone、厚み3cmの財布、Wi-Fi、鍵、イヤホン等を収納。ストラップを外した際は、そのまま単体の「ミニハンドバッグ」として機能するようハンドルを設計。
3.極薄スマホケース
ポケットや鏡の装飾を一切排除。機能は「指に引っ掛けるバンド」のみ。極限まで引き算されたミニマルなケース。

【第二期以降 制作アイテム】

4.普段使いのカバン(通勤バッグ)
ミニポーチやコスメポーチを美しく内部に収納できる、日常のメインキャンバス。
5.キーケース
計5本を収納。「絶対に落とさないこと」を優先し、鍵を内部に完全収納する構造。ストラップ接続も可能。
6.チャームミラー
ポーチ内に忍ばせたり、独立したチャームにも。安全性・機能性を優先し、割れない設計を採用。
7.iPadケース
※後日詳細設計(制作順序は最後)
8.コインケース
ストラップ等の吊るし機能を排除し、遠出や特定のシーンでのみ機能する完全に独立した単体アイテム。(制作順序は最後)
9.コスメポーチ
ドレスグロウ、マウスピース、ハンドクリーム、リップ類、チャームミラーを収納。ミニポーチには入れず、通勤バッグ内に常備。(制作順序は最後)

結論|時間をかけて揃う、未完成の贅沢。

アトリエに届き、用途に合わせて3枚のキャンバスへと姿を変えた広大な革を前に、現在どの部位を切り出すかを見極めています。
一度にすべてが揃う量産品とは違う、5ヶ月間の「待つ時間」すらも愛おしくなるような、あなただけの雪解けのキャンバス。まずは第一期のアイテムから、お手元に届く日を楽しみにお待ちください。

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